ねえ、


時計をみると0時30分。

30分くらい無駄にしてしまった。

どうせ死ぬならあれこれ考えずに死のうと思っていたのに。


「よし」


死ぬ前によしなんておかしいなと一人で笑いつつ、柵を超えようと歩き出した。



「本当に死ぬの?」


・・

一瞬思考が停止した。

こんな場所でしかもこんな時間に人がいるわけない。

でも一応声がしたほうを振り返ると誰もいなかった。


「なんだ、空耳か」


まだこの世界に少しだけ未練があるから聞こえたのだろう。

そう思ってまた歩き出す。


「そこから飛び降りたら、きっと痛いよ?」


まただ。

しかも今度はわりと鮮明にきこえた。
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