ねえ、



「天使くん」

あやめがそう呼んでくれるたび、嬉しくなった。

やっぱりあやめはあやめだと。


でも僕はあんまりあやめに近づかなかった。

それは高坂雫が隣にいるから。

なるべく自分が代わりになる人間とは深く接しないほうがいいと上からいわれていた。


だから話しかけてきたときには驚いた。


僕はあやめに未来からきたといったけれど、それは半分本当で半分嘘だ。

あやめの情報と、それに近い関係の人物のデータはもっているけれど、事柄について知っているのはあやめが自殺しようとしたことと、高坂雫が死んでしまうということだけ。

なので、このときにこれが起こるとかそういうのは一切わからない。

高坂雫のほうから接触してくることは想定外すぎて、ただ運よくチャイムというものが鳴ったのであまり深堀されなくてすんだのが救いだった。

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