ねえ、

「未来なんて、今のわたしには存在しない」


あやめのその言葉が僕の中でこだましていた。

たしかに、そうなのかもしれない。

僕はあやめが大学1年生のときをみてきているから未来があるといえるけれど、実際なにがあるかなんてなにもわからない。


僕が見てきた未来なんて所詮未来なんだと。


実際、僕が高坂雫のかわりになることで、未来はかわる。

僕はもともと存在しないものになるし、悲しそうな顔で歩いていた大学1年生のあやめも存在しないかもしれない。

僕の存在に気づいて駆け寄ってきてくれて、天使くんだと呼んでくれる未来は存在しない。


そう思うと、胸が痛んだ。
< 45 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop