ねえ、
「未来なんて、今のわたしには存在しない」
あやめのその言葉が僕の中でこだましていた。
たしかに、そうなのかもしれない。
僕はあやめが大学1年生のときをみてきているから未来があるといえるけれど、実際なにがあるかなんてなにもわからない。
僕が見てきた未来なんて所詮未来なんだと。
実際、僕が高坂雫のかわりになることで、未来はかわる。
僕はもともと存在しないものになるし、悲しそうな顔で歩いていた大学1年生のあやめも存在しないかもしれない。
僕の存在に気づいて駆け寄ってきてくれて、天使くんだと呼んでくれる未来は存在しない。
そう思うと、胸が痛んだ。