ねえ、
あの日、屋上から飛び降りようとした日、天使くんに出会った。
あの頃は、平凡な毎日がひどく苦しく感じて、自分で自分を追い込んで、わけもなく死にたいって考えるようになってた。
でも今は、平凡な毎日がすごく楽しい。
こうして大学で勉強して、雫が隣にいて、家に帰ると家族がいて。
そんな繰り返しの毎日の中でもきっとどこかに、幸せなことが待ってると思う。
「ねえ、あの人やばくない?」
「たしかに、なんか怪しさ満点。てか男じゃない?」
「ええ、やばい、不審者?」
近くを歩いていた子たちがざわざわし始めて指さしてるほうを見た。
その人はたしかに明らかにおかしかった。
敷地には入ってないものの、望遠鏡をもってこっちをじっと眺めている不審者以外の何者でもなかった。
でも、わたしにはそれが誰かわかった。
わたしは大きく駆け出した。