横顔がスキ 〜とある兄妹の恋の話〜
♪ ンチャ ンチャ ンチャ 〜〜

ボロボロのオーディオから
カセットテープの音楽が流れる。
レゲエだ。

体を汗が流れる。

「今からオーディションなのに
 なんか汗だくなんだけど!」

音楽に負けないよう声をあげる。

「オレは全然かまわないよ」
ニヤニヤしてる。

ほんとにもぅ。
こっちは困るっちゅーの。


♪ No Woman No Cry

「ノー ウォーマンノークラァイ♪」
柊にぃが陽気に歌う。

「お気楽でいいよねー、柊にぃは」

「フフフ」

あたしなんか
緊張してるってのに。

「これ、ボブ・マーリー?」

「そ、スタジオで見つけたんだ。
 今どきカセットテープなんて
 なかなかなくて、探したんだぜ」

柊にぃは週3音楽スタジオで
アルバイトしてる。
音楽が生活から切り離せない
柊にぃにはピッタリのバイトだ。

今回のオーディションの話も
そこの関係者から頼まれたらしい。


♪ No Woman No Cry


さっきまであんなに
かたくなだった心が溶けてゆく。

いつだって音楽はやさしい。
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