年上ダーリン、猫系につき溺愛中
『……俺が幸せにしたいので結婚してくれませんか』
15の3月、中学を卒業したわたしは片想いを募らせていた体育教師の深沢恭平(当時23才)とラインを交換する事に成功し、卒業式翌日呼び出されたかと思ったらプロポーズを受けた。
【先生好きー(笑)あ、もう先生じゃなくて恭平って呼べる?(笑)】って夜中に送ったラインには既読だけが浮いていて、だからまさか結婚なんて言葉が恭ちゃんから出るとは思わなくて。
まあ、付き合う工程を飛ばして結婚というのは先生が先生でいられる保険。もしくは万が一法律に触れる事がないための保険。どちらかによる消去法だったんだと思う。
「湊ちゃーん、お迎えー」
遠くで誰かがわたしを呼ぶ。
この瞬間、いつも幼稚園みたいだなって思う。
「ユッキーじゃあね、ミソ太もお疲れー」
「おー湊お疲れ、また明日な」
「(ミソ太もって何?なんでオレ朝日のおまけみたいな言い方されてんの?)……お疲れ湊! 転けるなよー」
「うるさい転けねーわ」
大好きな人。わたしが幸せにする人。
「恭ちゃーーん」と現場入口に立っている黒髪センター分けの長身に駆け寄ると、「おかえりー」と恭ちゃんは飛びついたわたしを抱き寄せた。
冷めてるようで素直な27歳。
「恭平今日早くない?」
「うん。今日は1コマ少なかったから」
「そんな事朝言ってた?」
「ううん。びっくりした?」
「した」
「それが狙い。早く着替えてきな」
ポンと頭をひと撫でした恭ちゃんはひらひら手を振って「待ってるから」とわたしを更衣室に送る。
左手には光る指輪。