年上ダーリン、猫系につき溺愛中
本当は茶髪に染めたいみたいだけど、恭ちゃんが働く塾では生徒が影響を受けないように髪を染める事を禁止されているので恭ちゃんは万年黒髪。
学校の先生をしていた頃は忙しくて切る暇がなかったせいで伸び放題荒れ放題だった髪も、今は2ヶ月に1回のペースで切れているので襟足刈り上げのセンター分けがキープされている。
中学ん時のいかにも「生活に疲れてるんです俺。もう本当髪切る余裕もセットする時間もないんです俺」って感じもかなり好きだったけど(あまりに伸びすぎて一時期後ろで括ったりハーフアップだったりした)。
「今日の夕飯はー」
「俺は猛烈にラーメンが食いたい」
「いいね! 何ラーメン?」
「絶対に迷わん、せーの」
「醤油」「豚骨」
「……は?」「は?」
家近くのスーパーのラーメンコーナーで醤油派(わたし)と豚骨派(恭平)が対峙する事数分、「醤油推されすぎて醤油食いたくなってきた……」と謎の理由で恭ちゃん敗北。基本的に恭ちゃんは我慢して折れる事はないけど、わたしの意見に染まって負ける事が多い。
「チョロ恭」
「やーめーろ」
「恭ちゃん可愛いなあ、醤油ラーメンに入れて食べたくなってきた」
「いややめて。普通にやめて」
「豚骨なら入れていいの?」
「そういう問題じゃねえーー」
「ケチかよ」
ケチじゃねえよつかケチ問題でもないだろ!と恭ちゃんわたしの荷物さりげなく持つところ。モテる。
「そういや授業終わりに先生結婚してるってマ?って言われたんだけど、マって何」
「マジ?の略」
「2文字を略すの? そのうちmとかになりそう」
「ならねえよド天然」
「口悪すぎだろ……」
文字に起こすんなら草しか生えない。マジで。
ていうか聞き逃したふりをしたけど恭ちゃんに結婚してる事がマジなのか聞く時点で狙ってんな。やっぱりわたしの彼氏モテるんだ~って自慢になるけど、全然嬉しくない。死にそうになる。
中学生の時は先生がモテる範囲が見えてたし、美容院行く暇もないほど忙しかったから予想的中彼女はいなかったし、学年中にわたしが恭ちゃんラブな事を知られていたからみんな応援スタイルだったから嫉妬を経験する事なく恭ちゃんを好きでいたけど。
今は恭ちゃんの事、見えない。
高校受験をする中学生を教えている恭ちゃんがモテる事は知っている。恭ちゃんを信じていないわけじゃない。でも恭ちゃんには「中学生のわたしを好きになった」前科がある。
こんな事を考えてしまうわたし、消えればいいのに。