蛍火に揺れる

数年後もしかしたら私はこの親子みたいに、ドーナッツを半分こして食べているかも知れないな、なんて。そう思うと、少し将来が待ち遠しくなってくる。


(さて、そろそろ家に帰ろうかな…)

今日は少し買い物の量が多い。なのでのんびりと三十分ぐらいかけて帰ってもいいかなとは思っている。
私は買い物袋を手にして、勢い良く立ち上がったーその瞬間だった。


(あれ?……ちょっと待って……?)

一気に目の前が真っ暗になり、立てずにそのまま椅子にへたりこんだ。
これは、あれだと一瞬にしてわかる。
貧血だ。


(昼にヒジキとホウレン草食べたのになぁ……)

元々ヘモグロビンが少ないから気を付けてとは言われていた。
常用はしなくていいけれどと鉄剤の処方もされていたので、私はふらつく頭をぶるぶる振り払い鞄から鉄剤を取り出した。
口に入れるとコーティングされていてもわかる、鉄の嫌な味が広がる。

とりあえず、自力で帰らなきゃ……。
ゆっくりと立ち上がった私は、ゆっくりー本当にゆっくりと、出口まで向かう。
途中何度か手摺に助けられながらようやく出口にたどり着き、目の前のタクシーに飛び込んで家まで帰った。

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