蛍火に揺れる


「ノリ君帰ってくるまでねーボコボコ動いてたんだけど、帰ってきた瞬間収まったんだよね」

「えっ?!何、僕嫌われてんのかな……」

「いや、多分帰ってきたから安心したんじゃない?『パパ帰ってきたし大丈夫だー』って」

「それならいいんだけどね…女の子だし、嫌われないようにしないとね……」


どうやらお腹の子の性別は女の子らしい。
それをノリ君に伝えたところ、何やら戸惑いの様子で……。

別に絶対に男の子!というわけではなかったけれど、一人っ子だったし女の子という存在は未知の生き物に見えるらしい。だからどう扱っていいのかわからないなぁ…と。
(だったら女である私は何なんだと思うけど、またそれは違うんだと。その辺りはよく分からない…)


「ねー、パパ好きだよねー?早く一緒に遊びたいよねー?」

そうお腹に向かって語りかけた瞬間だった。

「あっ!」

二人で驚き、顔を見合わせる。
今はっきりとわかるぐらいの胎動が来たのだ。

「ねーほら、パパ好きだってー」

偶然かも知れないけれど、お腹の子がちゃんと答えてくれている気がして。
喜ぶ私とは対照的に、ノリ君は何とも言えない表情で苦笑いを浮かべていた。




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