蛍火に揺れる

*****

その日の帰り、ハルさんから「上がったらロビーで待ってる」との連絡が来た。
うちの会社はビルの十五階から十七階にあって、社員は直接上のフロアに行けるが、来客の人達は一旦十五階にあるロビーを経由してもらうシステム。
十五階にはミーティングもできるロビーや総務部、経理部などのフロア。連絡の掲示板もあるので、一日に一回はうちの社員であれば立ち寄る場所だ。
(今日はハルさんも早いのかな?)

いつもハルさんと上がりが一緒の時は、どちらかがロビーで待っていて一緒に帰ることが多い。
最近どっちかが残業というのが多かったから、今日は一緒に帰れるらしい。
私は駆け足で非常階段を降りて、ロビーの方に向かった。

「ハルさ………あっ……」


確かに予想していなかった訳ではなかったのだが、ハルさんの隣に居たのは……ノリ君であった。


「沙絵、おつかれ。じゃあ頑張ってね江浪君」

「ちょ………ハルさん!!!」

追いかける間もなく、ハルさんは到着したエレベーターに乗って行ってしまう。
取り残されたのは、さっき告白した人と、さっき告白された人…という組み合わせ。
当然ながら、気まずい。

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