蛍火に揺れる

「いや…本当に伊藤さん辞めたのって、この仕事量に嫌気が差したからなんじゃないかって言う話も出てるぐらいで…」
「いや大丈夫、それはない」


ばっさりと返事をするが、石見君は疑いの眼差しを向けている。
どうやら…私が抜けて回らないというのは、あながち間違ってはいなかったらしい。
何だか悪いが、少しだけ優越感。


「沙絵ちゃん、何か僕も知らなかったけど…マーケティング部で沙絵ちゃん本当に妊娠だけなの?疑惑が噂されてるみたいで…」

「なにそれ?」

「伊藤さん、あんなに具合悪そうにしていて、本当は悪阻じゃなくてもっと末期のヤバイ病気なんじゃ…って言われてるんですよ」と付け足す石見君。


まぁ、あの時の具合の悪さは…確かに人生で一番のしんどさだったし、他の会社の人達の悪阻の具合を見ても、私がダントツで一番重かったとは思うけれど。


「今この状態見ればわかるでしょ?」
今現在私はピンピンしている。
まぁ貧血など多少のマイナートラブルは抱えているけど、至って健康状態は普通だ。
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