蛍火に揺れる

二人に会いたいのは、もちろん前提の話であるが…。

「あのね、二人に会いたいのは山々だけど、新宿にね、大きな手芸用品の店があるの」

「手芸用品?」

頭を捻るノリ君に、私はさっき作ったヘアバンドを取り出して見せてみる。

「あのねーちょっと私もベビー用品作ろうかと思ってね……」

私が取り出したヘアバンドをまじまじと見つめてるノリ君。

「沙絵ちゃん作ったの?」

「うん!あとね…スタイとか作りたくて、ミシンが欲しいの。安いものでいいから」

そのままヘアバンドを手に取ったノリ君は、細かい所までなめ回すように見ている。
なんだかそれは…粗捜しされているようで気分が落ち着かない。


「……すごいね、こんなの編めるんだ」
次の瞬間返ってきたのは、予想外の誉め言葉。

「いいと思うよ。いいじゃない。お母さんの手作りって素敵だと思う」

柔らかい表情でそう言われ、私はほっとひと安心。

「でも……新宿でしょ?電車で三十分ぐらいかかるけど……」

多分ノリ君の懸念材料は、電車の乗車時間だろう。
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