蛍火に揺れる
そりゃ数ヵ月電車に乗らない生活をしているのは確かであるが。


「大丈夫だって!そんな休日にうちの線は混まないじゃない」
そんな休日に座れないほど混む路線ではないので、座ってしまえばそのまま一本で新宿に行けるし。
私は難なく行けると思っているけど、ノリ君は渋い顔。


「いやーだってさー、ノリ君も二人がちゃーんと上手く行ったか気になるでしょ?」

行きたい!という気持ちを、チクチクと刺激。
するとしばし沈黙の後………観念したように「わかった」と。

「でもすぐに体調悪くなったら、引き返すからね」と念押し。
やったと喜ぶ私とは対照的に、ノリ君はため息をついたまま、渋い顔を崩すことはなかった。



そして閉店時間が迫ってきていたので、私たちは店を後にした。
店を出た瞬間、風か吹き抜けていく。
さっきよりも少しひんやりとする風が、季節が秋に変わっているのだというのを嫌でも感じさせる。ほとんど外出をせず夏を感じるとこがあまりなかったので、ほんの少しだけ名残惜しい気持ちだ。
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