蛍火に揺れる

「おーい、そろそろ出ておいでー。パパもママも待ってるよー」

何度も何度も声をかけるが、彼女は気にしないと行った感じでのんびりとお腹の中で足をバタバタさせている。


今日の健診の時まで話は遡る。
エコーを取った際、先生が何やら険しい顔で呟いていた。

「うーん……ちょっと頭が大きい、かな……?」

そして何度も計測をやり直しては「うーん……」と唸る。
何かあったのか?と不安になったが、先生は「赤ちゃんは問題ないんだけど……」と言って表情を濁す。

「江浪さん、身長何cmだっけ?」

「私ですか?百五十一か五十二の筈ですが」

「うーん、赤ちゃんの頭がね、これ以上大きくなると通らないかも…」

先生が懸念していたことは、私が小柄であるが為に、大きく育ったお腹の子が無事産道を通れるかと言うこと。
何と推定体重は予定日一週間前の今、もう三千グラムに達しているらしい。そして少しだけ頭が大きいのだとも。
だから一度、予定日近くなるとレントゲンを取りましょうということになった。


「今のうちに出てこれば、いいんだけど……ね……」との先生のコメント。
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