蛍火に揺れる
そしてなるべく陣痛を起こすために、ものすごく痛い内診の刺激もしてもらった。
もうそれは人生で一番と言っていいほどの痛みで…しばらく血の混じったものも出てきていたが、それから数時間。あっけなく止まってしまった。


そして帰宅した私は陣痛を起こさせようと、重たい体を引きずって部屋の雑巾がけをくまなく行う。
リビング、寝室では飽き足らず、風呂場の隅々まで丁寧に掃除。
そして全ての精力を使い果たしてしまった今、全くお腹はビクともしていない。

これは……掃除をやり損なのか。まぁ部屋が綺麗になっただけ良しとしよう、そう全く産まれる気配がないお腹を見ては、空しくなる気持ちに言い聞かせる。


さぁ休憩は終了して、散歩して買い物に行こう。
そう思ってトイレに駆け込んだ瞬間だった。


（…ん？あれ？）

便座に腰掛けた瞬間ー小さな音がした。
何だろう。何かがプチっと弾けるような、そんな音。
何か踏んだのか…？そう思うが特に思い当たるものはない。


（いや、まさか破水？）

でも破水って、勢いよく流れていくイメージ。ダラダラと羊水が溢れていくものじゃないのか？
< 131 / 153 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop