蛍火に揺れる
時刻は夜の十一時。
私は病室でテレビを見ながら、リクライニングを上げたベッドにもたれ掛かっていた。
(うわぁ…すごい、雪……)
画面に映っているのは、会社がある新宿付近の映像。
この辺りはそんなに降っていないけれど、新宿渋谷付近は大荒れの天気で、まるで吹雪のように激しく雪が降っている。
そして一部の電車が止まってしまい、タクシーを待つ長蛇の列、ホームから溢れんばかりの人達の様子が中継されている。
そしてそれを見ていると、心配が募っていく。
こっちに向かっているはずのノリ君から、さっきから全く連絡が来ていないのだ。
最寄り駅までの線は止まっていないはずだが…他線からの接続の関係や、振替輸送の人の波によって大幅に遅れや徐行での運転になっているらしい。
それでつい一時間ほど前に『全く動かないから歩いていく』という連絡が来て以降、全く彼から音沙汰がない。
(いや、別にまだ来なくても…いいんだけど)
さっきの内診の結果、子宮口はまだ四センチしか開いていない。今夜は一晩、三時間置きにモニターを付けて様子を見ましょうという話をしたばかり。
そしてその口ぶりからして……おそらく、今夜中には産まれないんだろうということが予測できたからだ。