蛍火に揺れる
何とかほんの最初の…基本の『き』ぐらいは習得できたかも知れないが、まだまだ未知の世界に踏み入れたばかり。
うちのお母さんが手伝いにきてはくれるが、飛行機の都合上三日後から。しかも二週間だけ。
それ以外は、全部自力でやらなければ行けない。

ただただ先を見ると、不安でしかない。


ーでもきっと、彼が居てくれるなら大丈夫だろう


「沙絵ちゃん、準備できた?」

彼が病室に顔を覗かせる。

「わああー蛍ちゃん可愛い!」

あの産まれる前の『女の子ってどう扱っていいか分からない…』という言葉はどこへやら。
今やもう娘にデレッデレの親バカ街道まっしぐら。
良い父親…を通り越して甘すぎないように見張ってなければな、なんて余計な心配をする程である。


「じゃ、そろそろ行こうか」
私が立ち上がると、彼も私の荷物を持つ。

「帰ろう、家に」
そして二人で目を合わせて微笑み、病室を後に。



ここが私達家族のスタートライン。
その先の未来は、まだまだ見えない。

だけれどきっと…この先には幸せな未来があると、信じている。
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