蛍火に揺れる
駅に到着すると、もう既に改札で二人は待っている。
「江浪君も大村君もお疲れ!」とハルさんが肩を叩いて労った。


「いや、本当に疲れたよなぁ大村課長ぉー」

「嫌みったらしい言い方やめろ」

大村君は相変わらずの(ノリ君に対して)塩対応。
でも彼がこんな遠慮のない態度を取るのは、多分ノリ君だけだろう。
その証拠と言っては何だが……

「伊藤さんお久しぶりです。これ出産祝いで、つまらないものですが」

「わぁ、ありがとう!」

私にはニコニコ笑顔で、小さな紙袋を渡す大村君。「つまらないものなんで、お返しはいいですよ」と言ってるが、紙袋のプリントからしてそこそこ高価な物であることが伺える。
「可愛いですねー」なんてしゃがんでベビーカーを覗き込んでいるが、なんだか見た目があまりにもかっこ良すぎる為なのか『赤ちゃん』との組み合わせは違和感がある。スーツ姿だから余計に、なのか。


でも立ち上がり、菅原さんが隣にきた瞬間ーその違和感は消えた。

(やっぱ、菅原さんが隣だと違和感ないよなぁー)
心なしか大村君が菅原さんを見る目には、沢山の愛情が見え隠れしているようにも思える。
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