蛍火に揺れる
さすがに、働いてすぐに結婚の話が出るのは…正直重いと思っている。
ここまで言えば諦めてくれるだろう、そう思っていた。


でも私の予想とは裏腹にーノリ君は首を横に振った。

「別に僕の院生時代の友達は…『就職が決まったから結婚しよう』ってパターンが多いんですよ。だから結婚どうのこうのという話は、そんな気にする話ではないと思っています。
 でも伊藤さんがそういう事情であれば、時間が無いのは仕方無いです。でも…少しでもいいので、見極める時間だけいただけませんか?」

正直結婚なんてドン引きされると思っていたが、意外と真摯に受け止めてくれてしっかりとした言葉が返ってきた。


『見極める時間』
確かに、まぁ彼のことは一度もそういう対象として見たことは無かった。
そこまで言われては……さすがに突っぱねるのは失礼だろうな、と思い直す。

私は小さく「分かった」とだけ頷いた。

すると安心したように、胸を撫で下ろしながら笑顔を浮かべている。
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