蛍火に揺れる
それに当時は……大いに頭を悩ませるものが一つ。


「あれ?伊藤さん。顔色悪くありませんか?」

私の顔をのぞきこんで、そう問いかけるノリ君。

「あぁ、ちょっと寝不足で……」

実はここんところ、色々重なり仕事も忙しくロクに寝れていなかったのだ。

「大丈夫ですか?」

「あぁ、うん。大丈夫……」

「江浪、ちゃんと寝かせてやれよ」
「そう言われても……」

部長はからかってるのか勘違いしているのか。
まぁいい。とりあえずこれのコピーを取らなければ…と、私は二人の間を裂くようにしてコピー機に向かおうとする。その時だった。

(あれ……?)

大きく一歩を踏み出した瞬間ー目の前が真っ黒になった。
まるでスプレーを振りかけられているかのように、サーっと視界が黒に染まって行く。


「ちょっ!伊藤さん!!」

一瞬意識が飛んだらしくー次に見えたのが、天井のスプリンクラー。
それに心配そうに見つめるノリ君。
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