蛍火に揺れる
そしてタクシーに乗せられて、自分が住んでいるマンションの前まで来た。
もちろん隣には…ノリ君も一緒だ。


「えっと、じゃぁ………」

到着しタクシーから降りると、私はオートロックを開けて中に入ろうとする。
しかし案の定、私は腕をがっちりと掴まれる。


「部屋に入ったのを見届けてから帰るんで」


いや、ここで良いんだけど……と言っても、恐らく彼の性格上あっさりと引き下がる訳はない。
言い合うことすらめんどくさく感じた私は、仕方なくオートロックを解除すると、彼をその中に引き入れた。


そのまま到着したエレベーターで五階まで上がって、自分家の前に来て鍵を開ける。
カチャっと鍵が開くと「もう大丈夫そうですね」と言われて、掴まれた腕が離れる。


「ちゃんと部屋に入るのを見届けたら帰ります」と。


どうやら本当に、何もせずに見届けて帰る気らしい。


「次、元気な時に呼んでください」
そう言って微笑まれて、私も微笑み返した。


「じゃぁごめんね、ありがとう」



そう言って部屋の扉を開けたーその瞬間だった。
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