蛍火に揺れる
封筒は宛名も名前も無い無記名。特定の人物ー例えば私の名前を書いているなどといった、誰に宛てたかをはっきり取れる文章は記載していない。


その中に書かれているのは、ひたすら気持ち悪い愛を謳ったポエム。
それが数日毎に、何十枚も入っている。
下のエントランスにあるポストではなく、部屋の扉に付いているポストに直接投函されているという執念。


「元カレ…元々は小説家を目指してた人だったから…」

「無理でしょこれは」

ばっさりと言った後に、はぁ…とため息をつくノリ君。

「それで、警察には通報したんですか?」

「勿論何度も相談に行ってる。でも無記名で誰の仕業か断定はできないっていうのと…殺意がある内容じゃないから、どうしようもないんだって」

犯人が元カレであるというのも、あくまで私の推測で確証があるわけではないし。
一応パトロールを強化してもらったり、ポストに投函しそうな時間を見張ってくれたりなどのできる範囲では動いてもらっていた。
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