蛍火に揺れる
「僕が怒っているのは、伊藤さんがこのことを話してくれなかったこと。
　それと伊藤さんが僕よりも…こんなくだらない男性と付き合っていたこと。僕は絶対に幸せにするように努力するのに」


私の顔を覗き込むようにして、静かに…諭すように真っ直ぐ私を見て言うノリ君。
私は返す言葉がなくてー俯くしかない。


「伊藤さん、この一ヶ月どうでしたか？僕はすごく楽しかった。
　毎日伊藤さんと一緒に居れたらいいのにって、そればっかり思ってました」


まっすぐに見つめる目。一点も曇りもなく、私を見ている。
私はこんな風に…この人と向き合ったことがあっただろうか。だからちゃんと、私も伝えなければいけない。


「私も…楽しかったよ。江浪君ともっと一緒に居たいと思ったし、もっと色んなこと知って行きたいって思った」

そう答えると、安堵した表情を見せたノリ君。
わたしもホッとしたのも束の間ー彼は私を強引に抱き寄せる。


「じゃぁいいじゃないですか」

想像よりも大きな胸。私の体はすっぽりと収まり、耳からはードク・ドクと彼の心音が聞こえる。
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