蛍火に揺れる
同期とは言っても二歳年上。私はハルさんと呼んで彼女に懐いている。


「沙絵何にした?」

「日替わりのうどんセット。ハルさんは唐揚げ?」

「そう、もう家帰ると揚げ物食い尽くされてんだよね。子供の食欲舐めてたわ」

ハルさんには当時三歳の子供が居た。
とは言え自分の実家に同居で、ほとんどの家事はお母さんがやっていると聞いている。
同居も「夫が体を壊して、仕方なく」で「私も稼がないと」と今もフルタイムで働くワーキングマザーなのである。


私達は昼食を食べ始めるが、ハルさんは邪険そうな目で私を見つめている。

「………何?」

「彼氏と別れた、話の続きをどうぞ」

そう、私は今朝ハルさんとばったり会った際、彼氏と別れたという話をしたばかりなのだ。


「……えっと、土曜の休日出勤を終えて彼氏の家に行くと、見知らぬ女の人が居ましたとさ」

今思い出しても腸が煮えくりかえりそうになる。
合鍵を使って開けるとーそこに居たのは裸の女性。
彼のシャツの手をかけて、ボタンを外している現場真っ最中。
彼はいかにも襲われた風ではなく、意気揚々とした顔をしながら。

これを浮気と言わずに何と言うか。

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