蛍火に揺れる
私はノリ君と付き合ってみて、そりゃ驚いたことは山ほど。

まず第一に、服や靴下など脱いだものをそのまま放置しないことに驚いた。
くだらないことではあるが…それで私の『独身男性』というカテゴリーの固定概念が大きく揺れ動くほど驚いたことなのだ。

それに食事を食べ終えると、真っ先に皿洗いを始める。洗濯物も取り入れるとちゃんと畳んでクローゼットやタンスの中に仕舞う。
世の中には自らこんなことをする男性が居るんだ!と私は目から鱗が落ちる思いだった。うちの母の尻に敷かれている父ですら、ガミガミと言われるまではやらない。

ただそれは、ノリ君にとっては至って普通のことらしい。


何ならノリ君のほうが帰宅が早いと…掃除も洗濯も終えて私を出迎えてくれる。そして温かいご飯も出してくれる。
それがまた、今までに食べたことのない美味しいエスニックの料理だったりするわけで。歴代の彼氏にはホカ弁すら買って待っててくれるという経験も無いので、そりゃもう彼は神か仏かっていうぐらい有り難く感じている。


ハルさんは「ようやく認めた」と、肩をすくませて笑った。

「沙絵はようやく王子様が迎えにきてくれたねー」

「王子って!!」

「やーだってそうじゃん」

さっきのお怒りモードはどこへやら。
ハルさんはヘラヘラ笑いながら私の肩を叩く。
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