蛍火に揺れる
王子。
まぁ確かに…私にとってはすっごく有り難い人物で、今までの沼から掬い上げてくれた人。
くだらない固定概念も全て壊してくれた人。
でも…その一方で、ある思いも大きくなっていく。
(そう、あれが江浪さんの彼女らしいよ?)
(えー…想像と違うー)
遠くからでもわかる、そんな私を品定めする声。
居心地の悪さを感じるのはここだけではない。
早速新卒の新人からも「どうやって付き合ったんですか!?」と、驚きと羨ましさで攻め立てられることも。
適当に答えてはいるが…答えるほど『なんで私だったんだ?』という思いは大きくなっていく。
私はただの…それも一般職入社の落ちこぼれ。
方や彼はエリートコースまっしぐらの幹部候補。
この会社に居る限り、ただの『落ちこぼれ』の私と『年下のエリート』と付き合っているという事実は消えない。
私は彼に勿体無いんじゃないか。
そんな思いは、ずっと喉の奥に引っ掛かったように、しこりとなって残っていた。