蛍火に揺れる
正直…帰らなくても良かったな。
疲れただけの帰省だったな、と改めて思い返したり。


「ただいま、沙絵ちゃんお帰り」

気がつけばノリ君がリビングに入ってきた。
いつの間にか帰宅していたらしい。スーパーの袋も下げているので、買い物も済ませてきたらしい。

「ただいま…」

「帰省どうだった?楽しかった?」

ノリ君はにこやかに話しながら、冷蔵庫に買ったものを詰めている。

「うーん……」

何て言ったらいいだろうか。結局ノリ君が帰ってくるまでに、上手い言い方を見つけることができずに考える。

「沙絵ちゃん、何かあった? 」

ノリ君は手を止めて、ペタペタと私の前まで来る。
そして覗き込むように、私の目をじーっと見つめた。

(どうせだし…ストレートに言っちゃおうか)

この人に、色々回りくどいことを言っても無駄だったな。
そう観念して、私は正直に話すことにした。


「あのね、ノリ君…うちの両親が会いたいんだって」

「沙絵ちゃんの両親が?」

コクり、と私は頷いてため息を漏らす。
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