蛍火に揺れる
「買ってあげたスマホからSIMカード抜き出して、鍵と一緒に顔に投げつけて、タブレットと一緒に回収してきましたとさ」
スマホは去年のクリスマス、欲しいと散々ねだられて買ったもの。
タブレットに至っては、元々は私のものだったやつだ。
いつの間にか彼の部屋に……ってやつ。
今思えば、タブレットはへし折っておけば良かったのか。
ハルさんは「相変わらず過激だねー」と言いながらも、大きなため息をついた。
「沙絵、やっぱり男の趣味悪すぎる」
「う″…………」
「前の彼氏は何?競馬に狂って無一文だっけ?」
「う″………………」
そう言われると、何も反論はできなくなってしまう。
確かに私はー壊滅的に男の趣味が悪いのは自覚していた。
でもまぁ恋とは盲目と上手いこと言ったもんで。いつも別れる間際に気付くのであった。
「沙絵、どうすんの?あと……二年?」
「うーん……だねぇ……」
あと二年、それが私のータイムリミット。
三十までに結婚しろと五月蝿い親。
それまでに見つからなければ、私は田舎に連れ戻されてしまうのだ。
何もない、ど田舎に。