蛍火に揺れる
「正直、僕としては結婚の話は進めて行ってもいいと思ってます。
しかし…どちらかと言えば沙絵さんの方が、不安に思うことも多いでしょう」
えっ?と驚きノリ君を見る。
両親の視線も、私の方に注がれる。
「恐らく沙絵さんの方が、年上という回りの目もありますし……第一、半ば僕が押しきった形で付き合いが始まりました。まだまだ彼女の中では、 僕と結婚するという未来が描けなくて当然だと思っています。
なので…ちゃんと不安を取り除いた上で、結婚を申し込みたいと思っています」
そう一気に言うと、少し後ろに下がっておもむろに頭を下げた。
「あと一年で構いません。僕に時間を頂けませんか?
きちんと沙絵さんも納得させてから、結婚を申し込みたいと思っています」
深々と床に付くような勢いで、もう一度頭を下げるノリ君。
それを安心して見ている両親の姿と……なんだか釈然としない気持ちを抱えた、私の姿がそこにあった。