蛍火に揺れる


時刻はもう夜の七時になっていた。

居間では夕飯が終わり、上機嫌に酒を飲んでいるお父さん。隣にはノリ君と、わざわざ実家に帰ってきた弟の昌幸(まさゆき)も加わって、男三人で酒盛りをしている。


「それでですね…元カレから手紙が届いてたんですが、それがまんま太宰や鴎外の模倣で」

「そういや沙絵の高校時代の彼氏はフリーターのバンドマンで、オリジナル曲って言いながらまんまグレイのパクリ演奏してたの覚えてる、なー沙絵?」


昌幸が帰ってきてからと言うものの…私の元カレ暴露大会が絶賛開催中。
彼氏ができる度に昌幸は『沙絵は男の趣味が悪い』と言い続け、毎回やめとけと反対に合っていたのだが……ノリ君のことはようやくお気に召したそうで。

まぁ二人が同い年ということもあるんだろうけど、私の過去話をつまみに大いに盛り上がっていた。


「沙絵にようやく普通の彼氏ができたわー」なんてお前は年上か!と突っ込みたいぐらい偉そうにしている昌幸。
それに同調するお父さん……とノリ君も。
< 46 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop