蛍火に揺れる
そんな私の思いを知ってか知らずか、いつも通りしれっとしているノリ君。


「僕は別に今すぐ沙絵ちゃんと結婚してもいいと思ってる。ずっと沙絵ちゃんが、そっちに気持ちが傾くことを願っているのは本当」

「な………」

「だって、沙絵ちゃんは具体的に僕と結婚した未来の想像がつかないのは本当でしょ?
 強引に酔った勢いで婚姻届書かせてもいいんだけど?でも犯罪になっちゃうか」

なんて本気なのか冗談なのかわからないトーンで話すノリ君。
いや…このトーンの話し方は、八割方本気だ。

私が返事を出来ずにいたら、ノリ君はこう呟いた。
「いつも沙絵ちゃんは、難しく考えてるね」と。



「懐中電灯消して」

ちょうどこの辺りだろうと、私は懐中電灯を消した。ノリ君も消したので、わたしはその場にさっとしゃがみこむ。
真っ暗闇のなか、緩やかな川のせせらぎ音だけが耳に響いている。


「ほら、あそこ」
私が指差す方向に目をやったノリ君は、思わず感嘆の声を上げている。

「すごい、初めて見た……」

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