蛍火に揺れる
「今度こそって思ってたんだけど……」

だから…とは言っては何だが、彼に好きで居てもらえるように努力をした。
『結婚したい!』と思わせるように、彼に尽くしてきた……とは言え、まあそれが裏目に出てこの結果なのかもしれない。
そう思うと、彼と付き合ったのは一体なんだったんだろうか。

食べ終わり、私達が席を立とうとした瞬間、一人の男性がやってきた。

「伊藤さん!佐々木さん!」

「江浪君、部長の説教終わった?」

「ええ、もう」

ハルさんとそう笑いあっている男性は、そう。経理部に所属していた江浪君ことノリ君。

ノリ君は元々、マーケティング部所属の私の直属の部下だった。
部下、まぁ確かに扱い的にはそうであったが、何せ彼は幹部候補のエリートなのだ。
上位の国立大学の院を卒業後、うちに来たエリート街道まっしぐらの人。
先月経理部に移動になり、今の役割としてはハルさんの上司に当たるポジションらしい。
とっくに私達の代は飛び越えていってしまっているのである。
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