蛍火に揺れる
そして光を高く見上げると、私の方に振り向いた。


「沙絵ちゃんとさ、これからも毎日を重ねていきたいんだ。毎日一緒に積み重ねて、思い出を共有して行きたいと思った。僕が結婚したい理由なんて、そんな些細な事なんだよ」

暗闇に、うっすらと浮かぶ彼のシルエット。
ぼんやりとしかわからなかったけど…いつも通りの笑顔を浮かべているのがわかった。


その時―私の中で、何かが溢れていく音がした。


あぁ、そうか。

私は…きっと心のどこかで、彼を信じきれていなかったんだ。
彼に釣り合う自信も……ずっと愛される自信もしっかりと持てる訳なんかなくて。

でもきっとこの気持ちがあれば…これからもずっと、辛いことや悲しいこと…嬉しいことも、分け合うことができるはず。
この人となら共に乗り越えていけるような、そんな気がしたのだ。


そして数年先も…また二人でこの蛍を見ているような気がした。


―きっとこの人となら大丈夫。


淡い光りに照らされながら、徐々に徐々に…その溢れた『何か』で、心にあった壁が溶けて行くのを、痛いぐらいに感じていた。

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