蛍火に揺れる
スッと通った鼻筋やくっきりとした目のラインは、どこか他の国の血が入っていると言われても納得してしまうほどだ。


「あれ、同期。知ってる?」

そうノリ君が耳打ちする。
しばらく考えた後…私は「あぁ」とようやく彼の存在を思い出した。


確かノリ君の同期には、もう一人幹部候補にかかっている人がいた。

とりあえず名古屋に飛ばして様子見させられているという話。
そして……恐ろしいほど綺麗な顔立ちをしていて「あれはヤバイ!」と噂になっているということも。
(ちなみにこの情報は、人事部部長の奥さんであり私の短大の先輩からの情報。ノリ君と付き合うなら知っとけと)



ノリ君は彼に近づくと―肩をガッと掴んで引き寄せる。


「俺は知ってるぞ~?前の合コンで、セントレアの受付のお姉さんお持ち帰りしたんだって~?」

「ちょっ……なっ……!」


彼が狼狽えているあたり…どうやら本当らしい。

「それでね沙絵ちゃん、その前は名古屋のお天気お姉さんやってる女子大生をお持ち帰りし…」
「ちょ!違う違う!!」

首も肩も震わせて、精一杯の力でノリ君は振り払われた。
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