蛍火に揺れる
するとノリ君は困惑したように苦笑い。
「ええっと…確かに沙絵ちゃんの前では良く思われたかったってのもあるし、どっちかって言うと『僕』の方が言いやすいのはホント。後輩とか大村とか…友達居る前では俺って使うけど」

「そうなんだ」

「だってさぁ、大体の日本語の教科書って、一人称私か僕でしょ?回りにそんな日本人も日本語喋る同世代もいなかったし、必然的にそうなるって」

まぁ彼の言い分はごもっともだろう。彼が素で喋る言葉は、ザ・教科書に書いてある日本語に近い気はしている。
とは言えまた違ったノリ君の一面が見られて、なんだか嬉しいような。


きっとこういう私の知らない部分も、これからいっぱい出てくるんだろうな。
本当ならばそういうのを寂しく思うことの方が多かったけど…今はそれがすごく楽しみになっている。

笑ったままノリ君を覗き込むと―なんだか不貞腐れた顔に変わった。
そしてさっさと顔を背けて歩いていく。
こういう所は…やっぱ年下で可愛いな、なんて思うのは本人には内緒だ。
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