蛍火に揺れる
それとなくご両親のことを聞いてみても「海外に居るから、時期が来たらね」とだけしか。


そんな少しモヤモヤしながらも、何となく話題にするのは憚れた。

そしてようやく『両親に会ってほしい』
そう言われたのは、一年以上経過した翌年の夏に入った頃だった。



******

空港に降り立った瞬間、私は驚いた。
日本よりも…ここは過ごしやすい気候なのではないか、ということに。

確かにここしばらく、日本は異常気象に見舞われて暑い日が続いていた。
ここは同じかそれ以上に暑い筈なのに…全く不快な空気じゃなく、むしろ吹き抜ける風が心地よく感じる。


私達は夏休みを利用して、ダナンに来ている。

ダナン。
初めて聞いたときはどこだ?!と頭を捻ったものだが、どうやらアジアリゾートの中では有名な方らしい。
直行便で六時間、ベトナム中部に位置する町である。


ここに何をしに来たのか、それはノリ君の両親に会うため。
確かに海外を―それもどちらかと言えば発展途上国を転々としていたのは聞いていたが、いざここだと言われると…少し面食らってしまった。全くその場所がどういう所であるか未知の世界に思えたのだ。
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