蛍火に揺れる
「元々私たちの出会いも海外だったから、海外で暮らすことに抵抗は無かったの。それに、やっぱり家族は一緒に居るべきだという考えがあったから、私は憲正を連れて着いて行くことにした」

ノリ君のお母さんは、そう言いながら当時を振り返っている。

「それに憲正にとって、海外で生活することで色んな視野が広がると思っていたし…あわよくば、将来は海外経験が生きる仕事に就いてくれたらっていう思いもあったの。
　でも結局貴方は……日本にずっと居ることを選んだのね」

お母さんのその言葉に、ノリ君は静かに頷いている。

「でも海外での経験は、僕にとってプラスになっている。色んな文化の多様性や、考え方の違い。言語だって…日本じゃ学べない色んなことを学ぶ事ができた。
　だから僕は、二人にすごく感謝しています」

そして改めて、二人に頭を下げているノリ君。


「でもやっぱり僕は、日本でずっと暮らしていきたい。沙絵ちゃんと一緒に、日本で『帰る場所』を作っていきたいと思っています。
　だから二人にも、応援してほしいと思っています」

そう言いきったノリ君を、二人は優しそうな目で見つめ、微笑んでいた。
「当たり前だよ」と言いながら。
< 66 / 153 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop