蛍火に揺れる
「正直ね、デベロッパーに入社を決めたのはいいけど、あんまり乗り気じゃなかったんだよね。結局親と同じような仕事を選んでしまったなって。それにマーケティング部って言われて、さらにヤル気は急降下」

苦笑いしながら、そう話すノリ君。
当時を振り返ってみても…彼はそつなく仕事をこなし、そんな仕事に悩みや蟠りを抱えているなんて微塵も気付かなかった。

むしろ淡々と仕事をこなしていく様子は羨ましく……私にとっては憎らしい対象にも思えていたのだ。


「でもマーケティング部には沙絵ちゃんが居て、沙絵ちゃんと一緒に仕事をするようになって…仕事を好きになれたんだ。
 決して表には出ない仕事だけど、絶対に人の役に立つ仕事なんだってプライドを持って仕事をしている姿を見て……あぁそうかって。
 お父さんがやってたのって、こういうことだったんだなって。
 こういう気持ちで仕事してたんだなって、ようやく理解することができたんだ」

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