蛍火に揺れる
「あのね、沙絵ちゃん。改めて言いたいことがあります」
そして私の前に跪き、花束を差し出した。
「沙絵ちゃん、僕と結婚してください」
薔薇の向こうに、彼の顔が見える。
あの日から変わらず、私を真っ直ぐに見つめる顔。
『伊藤さん、僕と付き合ってください』
あの日から私と向き合う顔は、何一つ変わらない。
いつも真剣に私と向き合ってくれて…いつも私に全力でぶつかってくる。
ーそして真っ直ぐに、私を愛してくれる人。
気がつけば、彼の顔はぼやけて滲み…涙が頬を伝っているのがわかった。
「………はい…」
私は精一杯声を振り絞り、頷く。
涙で滲んだ先にはーいつものように、柔らかな笑顔で笑う彼の姿があった。
「来年にさ、ここにチャペルができるんだって。
だからここで結婚式を挙げたいんだけど、どうかな?」
私は流れてくる涙を止めることができずーただただ俯き、首を何度も何度も縦に降った。