蛍火に揺れる
そうノリ君の肩を掴んで激しく揺さぶるハルさん。
いや、この人は大分本気、だな…。もう意地でも営業部の誰かには渡したくはないという気合いが伝わる……。


「で、そういえば沙絵、ひょっとして…?」


ハルさんは掴んだ手を離して、私に視線を傾ける。視線は私の顔ではなく、お腹ーそれも太股に近い辺り。
まぁさすが先輩ってところだろうか。

「……まだ数日だけど、遅れてんのよね」

そう言うと「やっぱり」と呟くハルさんに、びっくりした顔で私を見つめるノリ君。「えぇ?えぇっ?!」となぜか一人で慌てている。


「じゃあ検査薬試してみたら?以外と数日でも反応が出るもんだよ」

「そうなんだ、じゃあやってみようかな」

「うんやってみたら?また結果聞かせてね」

そして別路線のハルさんは、手を振って改札の中に入っていく。
私も立ち止まって手を振り、ハルさんを見送った。


「さ、沙絵ちゃん。あの…本当?」

さっきからノリ君の動揺が凄い。
まぁお酒も結構飲んでいるし…感情の振れ幅が大きくなっているんだろう。
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