蛍火に揺れる
私が悪阻でダウンして以来、家事はほとんどノリ君に任せっぱなし。
通常の家事に加え、寝込んでいる私の世話までもしてくれて、本当に頭が上がらない。


ーこの人に、こんな負担をかけさせていいのだろうか?

会社での重圧に加えて、家ではずっと寝込みっぱなしの私の世話まで。
この人が休まる時間ってあるのだろうか?


「…沙絵ちゃん?」

色々考えていたら、返事をするタイミングを見失ってしまった。

異変を感じたノリ君は、ベットの隣に来てしゃがむ。
そして私の顔を覗き込むように見つめると、口を開いた。




「沙絵ちゃん、あのね。今日、マーケティング部の部長と話したんだけど……退職を選ぶんだったら、僕は反対はしないよ」

一瞬目を見開き、見つめる。
まさか部長がそんな…ノリ君にまでこんな話をするとは。


「わかってる……わかっては、いるの………」

ポタポタと涙が溢れ、涙を拭うが顔を上げられずに伏せる。
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