蛍火に揺れる
そんな私の手を握って、ノリ君はゆっくりと語りかける。
「あのね沙絵ちゃん。僕はさ、沙絵ちゃんと産まれてくる子が元気であればどんな未来でもいい。いや……沙絵ちゃんがずっと傍に居てくれたら何でもいいんだ。子供が居る居ない、働いているいないなんて些細な話なんだよ」
再び溢れてくる涙。
その涙は、指で絡め取られて拭われていく。
「沙絵ちゃんは、どんな未来を夢見てる?それを考えて欲しい」
描く未来はどんな未来か。
本当は…本当は、ずっと気付いていた。
こんなちっぽけなプライドにしがみついて、こんな所で犠牲にするのは間違っているんだということ。
でも私は、認めたくなかっただけ。
仕事以外で何も価値を見出だせないぐらい…空っぽな自分を認めたくなかっただけ。
この人が好きな『仕事をする私』が無くなったら、私を好きになってもらう価値が無くなりそうなことを認めたくなかっただけ。
「沙絵ちゃん、愛してるよ」
何度も彼は『愛してる』と囁きながら、私を抱き締める。
私は一晩、その胸の中で泣き腫らした。
そして翌日ー吹っ切れたように私は、あっさりと退職の意思を伝えた。
思っても見なかった専業主婦生活に突入したのである。
「あのね沙絵ちゃん。僕はさ、沙絵ちゃんと産まれてくる子が元気であればどんな未来でもいい。いや……沙絵ちゃんがずっと傍に居てくれたら何でもいいんだ。子供が居る居ない、働いているいないなんて些細な話なんだよ」
再び溢れてくる涙。
その涙は、指で絡め取られて拭われていく。
「沙絵ちゃんは、どんな未来を夢見てる?それを考えて欲しい」
描く未来はどんな未来か。
本当は…本当は、ずっと気付いていた。
こんなちっぽけなプライドにしがみついて、こんな所で犠牲にするのは間違っているんだということ。
でも私は、認めたくなかっただけ。
仕事以外で何も価値を見出だせないぐらい…空っぽな自分を認めたくなかっただけ。
この人が好きな『仕事をする私』が無くなったら、私を好きになってもらう価値が無くなりそうなことを認めたくなかっただけ。
「沙絵ちゃん、愛してるよ」
何度も彼は『愛してる』と囁きながら、私を抱き締める。
私は一晩、その胸の中で泣き腫らした。
そして翌日ー吹っ切れたように私は、あっさりと退職の意思を伝えた。
思っても見なかった専業主婦生活に突入したのである。