蛍火に揺れる
『専業主婦の生活』
私の想像では、毎日家族のためにピカピカに部屋を掃除して健康的な料理を作って……単語からは、そんな生活を想像していた。
しかし専業主婦となった今、そんな生活とはかけ離れた生活を送っている。
なんせ毎日起きれるか起きれないかの瀬戸際で、家事なんてもっての他。せいぜい調子の良い時に米を炊くとか味噌汁程度の簡単な料理ができるぐらいだ。
そんな全く役に立たない私を、ノリ君は文句一つも言わずに支えてくれた。
「沙絵ちゃん、冷やし中華買ってきたら、食べられるんだったら食べてね」
「お豆腐買ってきたんだけど、どうかな?果物はどう?パイナップルとリンゴ買ってきたんだけど」
「お風呂入れたけど入れそう?シャワーの方がいいかな?沙絵ちゃんがお風呂入ってる間に掃除機かけちゃうね」
彼自身仕事で疲れているだろうに…でもそんな様子は一切見せずに、毎日私のことを気に掛けて、世話をしてくれる。
仕事も忙しいはずだ。「大丈夫だから」と何度言っても、彼は「僕の仕事よりも、沙絵ちゃんの仕事の方が大切じゃない」と毎日きっちりと家事をこなしていた。
「今の沙絵ちゃんは、『人間保育器』なんだから。誰にもできない、子供をお腹の中で育てる仕事をしてるんだから」とも。
改めて思う。私には勿体無いぐらいできた人だ。