蛍火に揺れる
でもこの人じゃなければ、私はこの妊娠に耐えられなかったし…そもそも子供が欲しいとは思わなかっただろう。


こんな彼の懸命な努力のおかげか、食欲が大分戻ってきた。
マイナス六キロだった体重は、半分のマイナス三キロまで回復。短時間であれば、外出ができるぐらい体力も回復してきた。


その頃にはーぺたんこだったお腹は、ほんの少しだけ大きくなっていた。
ようやく妊婦らしい見た目になってきて、ちゃんと子供が居るのだと実感できるようになってきたのだ。



******

「ただいま」

「おかえりノリ君、遅かったね」

時刻は午後九時頃。
最近はいつも早く帰ってきてくれていたので、それに比べると遅い時間の帰宅だ。

「ご飯準備するね。親子丼とサラダだけど」

八月のお盆が過ぎた頃には、それなりに家事もできるようになっていた。とは言え日々の洗濯、近所のスーパーに買い物。作れる料理は丼ものや麺類などの簡単なものとか、そういう感じだったけれど。
それでもようやく、ノリ君の役に立てることができるようになったのが嬉しかった。

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