蛍火に揺れる
私はご飯を丼によそい、鍋に火をかけながら卵をボールに割る。
ノリ君もネクタイを外し上着を脱いでいるが……なんだかいつもより神妙な顔をしている。


「ノリ君?何かあった?」

「うーん……沙絵ちゃんの後任の話なんだけど」

私の後任。
私が抜けてマーケティング部は超絶人手不足らしい。
なので…私の旦那であるノリ君は、マーケティング部から『誰か移動させて!』と毎日のように懇願されていたらしい。ホントかどうかは知らないが…。


「えーでも育休中の二人が復帰するから、経理部から菅原さん出すって話じゃなかったっけ?」

ハルさん曰く『要領が良いし、わりと何でもこなしてくれる』らしい菅原さんは、きっとマーケティング部にとっては喉から手が出るほど欲しい存在だろう。
ちょうど経理部で育休復帰が二人も出るというこもあるので、経理部から誰か…と考えると菅原さんが適任で、尚且つ私とも面識があり仕事内容も把握しているのでほぼ決まりのはず…と言うのがノリ君から聞いた話だった。


「それがさぁ、ギリッギリの所で広報に取られたみたい。広報宣伝課って」

「ちょ……えええ?!」
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