蛍火に揺れる
いや、ひょっとしたらそれは私達が『見えるだけ』で、いいカモの一人の扱い、とか?

「ってことは、菅原さん…大村君に弄ばれてる……?」

「いやーあいつにそんなのできるかねぇー。
 第一会社でそんなリスク背負える?また名古屋かどっか飛ばされると思うけど」


まぁ確かに、そりゃそうだろうなぁ。あの様子だと、大村君は再び本社から飛ばされることは絶対にしたはくないだろう。

うーんと考えながら、私は鍋の中身を丼にささっと移す。
そしてダイニングテーブルに置くと、ノリ君は席について「いただきます」と手を合わせた。


「多分だけど、大村は菅原さんのこと好きだと思うよ。いつも目で追ってるし。
 今んとこ考えられるのは、菅原さんにその気がないってことかな」

親子丼を丁寧に箸で摘まみながら、ノリ君はそう言った。

「でも、そんな菅原さん、彼氏は絶対に要らない系ではないとは思うけど…?」

「前回も痛い目に合ったから、今回も合いたくない系?ま、大村モテるからね。その辺は疑心暗鬼になっても仕方ない」

なるほど、と私はうんうん頷く。
そりゃあんな何もしなくても女の影がちらつく人間が彼氏になると…心は休まらないのかもなぁとは。
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