水曜日は図書室で
「えーと、まず小麦粉をふるうんだっけ」
 週末、美久の家。いよいよ一緒にチョコレート作りだ。
 エプロンをして、手もきれいに洗った。材料や道具を並べた前で、留依が勢い込んで言った。
「その前に材料を全部、測るんだよ、留依ちゃん」
 美久はちょっとおかしく思いつつも、はかりを示した。
「ああ、なるほど……いっぺんに最初に測っちゃったほうが効率がいいってことだね」
「そういうことだよ」
 というわけで、まずは材料計測。最近のはかりは優秀なので、ボウルなどの容れ物の重さを勝手に引いてくれて測ることができる。
 小麦粉、バター、それから砂糖、チョコレート。計測は留依に任せた。美久は測る前のバターを切ったり、チョコレートやくるみを刻んだりと包丁を使う。
「全部ぴったりだよー!」
 小さなボウルにそれぞれきちんと分けられた材料。留依は得意げに言った。
「ありがとう。じゃあ、これを混ぜていこうか」
「了解!」
 まずはバターを練る。そうしてから卵や砂糖を加えて混ぜていくのだ。
 今回作ろうと決めたのはチョコレートブラウニー。材料を混ぜて焼くだけなので、作るのも簡単で、初心者の留依にもおすすめだと思ったのだ。
 それに混ぜて焼くだけなのに、くるみを入れるので香ばしくておいしいし、ラッピングでいくらでもアレンジができる。バレンタインにもってこいだ。
 ラッピング用品も留依と一緒に見に行っていた。百均にだ。
 百均はまさにバレンタインシーズンということで、かわいいラッピングの素材がたくさん並べられていた。なんならチョコを作るキットまで売っているくらいだ。
 ピンク、緑、赤……ポップだったりゆめかわだったりと、印象もさまざま。どれにしようかずいぶん目移りしてしまった。
 最終的にちょっと多めに買い込んだ。友達にも友チョコとして配るからである。
 友チョコとしては、小さめのキューブチョコを作ることにしていた。これは本当に溶かして固めるだけである。でもそれだけでは味気ないので、中心にドライフルーツやナッツを入れることで変化を付けるのだ。
 それはまた後日……簡単なので放課後にでも作ろうかということになっていた。
 ブラウニーに先に取り組んだのは理由がある。
 ブラウニーは焼き立てあつあつが、もちろんとってもおいしい。
 けれど、数日寝かせるとバターがなじんで別のおいしさになるのだ。
 大切なひとに贈るのだ。一番おいしい状態を食べてほしいではないか。それで先に本命チョコ作成になった次第。
< 106 / 120 >

この作品をシェア

pagetop