水曜日は図書室で
勇気と信頼
二月ももうすぐ終わる。三学期の終わりも近づいてきた。
二年生も終わるということだが、なにしろあと一年はこの十色高校での日々は続くのだ。美久も、そして多分周りの子たちもそうだろうが、あまり構えてはいなかった。
いよいよ最高学年で受験生である三年生になるというちょっとした緊張はあるけれど、それでも卒業や入学などはなのだ。ある意味のんきな年だといえる。
だから、月末にレクリエーションの球技大会があったときも、体育の授業の延長のような気軽さだった。
けれど今回のものは学年末。秋のものより規模が大きく、学年全体でのものになった。
選べる種目まである。
あのときと同じバスケだけではなく、バレー、サッカー、ドッジボール……好きなものに出ることができた。
美久は運動部ではないので、部活と同じ種目を選ぶということはない。ひとが足りないというのでドッジボールに出た。
運動は苦手ではないし、それに。
「綾織さん!」
不意に名前を呼ばれた。そちらを向くと、同じチームにいた子が美久に向かってボールを振りかざすところで。
美久は一瞬で理解した。どきっと心臓が高鳴る。
でもすっと腰を落として、手を出した。小さく頷く。
ヒュッとボールが飛んできた。美久に向かって、まっすぐ。
それをしっかり捕まえて、持ち直して、美久はすぅっと息を吸い込んだ。
前を向いて、ボールを持った手を大きく振りかざして。
コートの自分の正面にいた子に向けて、投げる。敵チームの子が目を丸くして、とっさに手を出すのが見えた。
パシッと小さな音がした。その子がボールをなんとか受け止めた音。
取られてしまうだろうか。美久の心臓が一瞬ひやりとしたけれど、その子の手からボールは落ちた。
ぽろっとこぼれて、とんとんっと転がっていく。
ピーッと笛が鳴った。
「やったぁ!」
二年生も終わるということだが、なにしろあと一年はこの十色高校での日々は続くのだ。美久も、そして多分周りの子たちもそうだろうが、あまり構えてはいなかった。
いよいよ最高学年で受験生である三年生になるというちょっとした緊張はあるけれど、それでも卒業や入学などはなのだ。ある意味のんきな年だといえる。
だから、月末にレクリエーションの球技大会があったときも、体育の授業の延長のような気軽さだった。
けれど今回のものは学年末。秋のものより規模が大きく、学年全体でのものになった。
選べる種目まである。
あのときと同じバスケだけではなく、バレー、サッカー、ドッジボール……好きなものに出ることができた。
美久は運動部ではないので、部活と同じ種目を選ぶということはない。ひとが足りないというのでドッジボールに出た。
運動は苦手ではないし、それに。
「綾織さん!」
不意に名前を呼ばれた。そちらを向くと、同じチームにいた子が美久に向かってボールを振りかざすところで。
美久は一瞬で理解した。どきっと心臓が高鳴る。
でもすっと腰を落として、手を出した。小さく頷く。
ヒュッとボールが飛んできた。美久に向かって、まっすぐ。
それをしっかり捕まえて、持ち直して、美久はすぅっと息を吸い込んだ。
前を向いて、ボールを持った手を大きく振りかざして。
コートの自分の正面にいた子に向けて、投げる。敵チームの子が目を丸くして、とっさに手を出すのが見えた。
パシッと小さな音がした。その子がボールをなんとか受け止めた音。
取られてしまうだろうか。美久の心臓が一瞬ひやりとしたけれど、その子の手からボールは落ちた。
ぽろっとこぼれて、とんとんっと転がっていく。
ピーッと笛が鳴った。
「やったぁ!」