水曜日は図書室で
数学、英語、現代文……など、教科はたくさんある。全部なんてとても手が追い付かない。
なので、的を絞ることにした。
留依の学校の進み具合を見せてもらった結果、数学はそれほど変わりはないが、英語が遅れ気味だったことを知った。なので「英語からやってみようよ」と美久が提案したのだ。
幸い、美久は英語がそこそこ得意。一番得意なのは国語系だけど。
でも英語も言語を扱うという点では同じなのだ。数学などの理系よりはずっと好きだった。
ローテーブルの前のクッションに座って、参考書やワークを広げて、今日は留依が問題を解くのに付き合った。
「これはなんだろ。知ってるような、知らないような……」
「これはね、過去進行形なんだよ。確かこのページに一覧が……変わるのには法則があるから、これを見ながらだとわかりやすいよ」
「なるほど」
参考書や教科書のページにふせんで印をつけていく。
テストの内容も、もう一年半ほどこの高校に通っている美久のほうが予想できて当然。
「ここらへんが重点的に出るんじゃないかなぁ。長文より穴埋めのほうが多いから」
「そうなんだね」
留依はそれに答えて、教科書に貼ったふせんに「重要!」と書いていく。
「あ、あくまで予想だからね? 外れるかもよ……」
「いやいや、まるっきりわからないよりずっといいよ! ありがとう」
留依はシャーペンを持ったまま美久を見て、にこっと笑ってくれる。
美久はほっとした。
勉強はそれほど好きというわけではない。でも嫌いでもない。わからないことを知っていくのは楽しいし、できるようになるのも楽しいし。
おまけに、今は自分が留依の力になることができているのだ。いつも自分を引っ張っていってくれる留依。サロンに連れて行ってくれたときのように。
そんな留依に、自分からもしてあげられることがあるというのは嬉しいし、なんだか誇らしくもあることだった。
自分は確かに引っ込み思案で内気で、地味かもしれない。
でもなにもないわけじゃない。
おまけに留依に引っ張られてだけど、髪型を変えるという一歩を踏み出すことまでできた。
美久の中に、まだ小さなものではあったけれど、確かに自信が生まれつつあったのだ。
「留依? 入っていい?」
そのとき、こんこんとドアがノックされた。留依のお母さんのようだ。
留依が「はーい」と返事をする。
ガチャ、とドアがひねられて入ってきた留依のお母さん。その手にあったものに、美久と留依は、わぁ、と声をあげてしまった。
「勉強進んでる? 少し休憩したらどうかしら」
「ケーキじゃん! ありがとうお母さん!」
トレイに乗っていたのはモンブランがふたつと、お茶が入っているらしいティーポット、カップもふたつ。留依が嬉しそうな声をあげた。
「あ、ありがとうございます」
美久もお礼を言う。モンブランは茶色のクリームがこんもり盛られていて、黄色の栗がてっぺんに飾られていて、とてもおいしそうだった。秋らしくもあるスイーツだ。
なので、的を絞ることにした。
留依の学校の進み具合を見せてもらった結果、数学はそれほど変わりはないが、英語が遅れ気味だったことを知った。なので「英語からやってみようよ」と美久が提案したのだ。
幸い、美久は英語がそこそこ得意。一番得意なのは国語系だけど。
でも英語も言語を扱うという点では同じなのだ。数学などの理系よりはずっと好きだった。
ローテーブルの前のクッションに座って、参考書やワークを広げて、今日は留依が問題を解くのに付き合った。
「これはなんだろ。知ってるような、知らないような……」
「これはね、過去進行形なんだよ。確かこのページに一覧が……変わるのには法則があるから、これを見ながらだとわかりやすいよ」
「なるほど」
参考書や教科書のページにふせんで印をつけていく。
テストの内容も、もう一年半ほどこの高校に通っている美久のほうが予想できて当然。
「ここらへんが重点的に出るんじゃないかなぁ。長文より穴埋めのほうが多いから」
「そうなんだね」
留依はそれに答えて、教科書に貼ったふせんに「重要!」と書いていく。
「あ、あくまで予想だからね? 外れるかもよ……」
「いやいや、まるっきりわからないよりずっといいよ! ありがとう」
留依はシャーペンを持ったまま美久を見て、にこっと笑ってくれる。
美久はほっとした。
勉強はそれほど好きというわけではない。でも嫌いでもない。わからないことを知っていくのは楽しいし、できるようになるのも楽しいし。
おまけに、今は自分が留依の力になることができているのだ。いつも自分を引っ張っていってくれる留依。サロンに連れて行ってくれたときのように。
そんな留依に、自分からもしてあげられることがあるというのは嬉しいし、なんだか誇らしくもあることだった。
自分は確かに引っ込み思案で内気で、地味かもしれない。
でもなにもないわけじゃない。
おまけに留依に引っ張られてだけど、髪型を変えるという一歩を踏み出すことまでできた。
美久の中に、まだ小さなものではあったけれど、確かに自信が生まれつつあったのだ。
「留依? 入っていい?」
そのとき、こんこんとドアがノックされた。留依のお母さんのようだ。
留依が「はーい」と返事をする。
ガチャ、とドアがひねられて入ってきた留依のお母さん。その手にあったものに、美久と留依は、わぁ、と声をあげてしまった。
「勉強進んでる? 少し休憩したらどうかしら」
「ケーキじゃん! ありがとうお母さん!」
トレイに乗っていたのはモンブランがふたつと、お茶が入っているらしいティーポット、カップもふたつ。留依が嬉しそうな声をあげた。
「あ、ありがとうございます」
美久もお礼を言う。モンブランは茶色のクリームがこんもり盛られていて、黄色の栗がてっぺんに飾られていて、とてもおいしそうだった。秋らしくもあるスイーツだ。