水曜日は図書室で
留依の様子と言葉に、クラスはざわっとした。一気に視線がこちらへ集まってくる。
美久はそれにおどおどとしてしまったのだけど、今は驚きと、視線の先の彼女のほうが重要だった。
「え、あ……っ、留依、ちゃん……?」
美久が戸惑いつつも、名前を呼んだことにほっとしたのだろう。もっと嬉しそうな顔をしてくれた。
「そう! そう! 一色(いっしき)小学校で二年生まで一緒だった留依だよ! えっ、知ってるひとどころじゃなかったよ! 偶然だね!」
留依は自分を指差して、満面の笑みになる。
どうやら知り合いに再会したようだ。
それはクラスにも了解されたようで、ざわめきは少し収まった。
「え、ぐ、ぐうぜん、だね……」
しかし美久はもっと口ごもってしまう。
留依に思わぬ再会をした戸惑いではない。
教室の前から思い切り自分に話しかけられて、そのためにクラスの視線が自分と留依のやりとりに向いていて。それに戸惑ってしまっていたのである。
それを途切れさせてくれたのは桜木先生だった。
「なんだ、友達がいたんだな。そりゃ良かった。じゃ、ちょうどいいから綾織にいろいろ教えてもらうといい」
「はい! そうします!」
それから留依は自己紹介に戻った。
テニスをやっているのだとか、勉強は数学が得意だとか、そういう、ごく普通の自己紹介。
聞きながら美久は、ぽうっとしていた。
クラスの視線を集めてしまって、まだちょっと心臓は高鳴っていたけれど。
こんなところで、こんな再会をするとは思わなかった。
だって、留依が言った通り、約十年ぶりなのだ。
留依が小学校二年生のときに、ご両親の都合で引っ越してしまってから。
最初こそ手紙なんかを書いたけれど、最近では年賀状くらいしかやりとりをしていなかった。
スマホを持つようになったのも中学生からだったから、連絡先も知らなかったし。
おまけに留依はずいぶん外見が変わっていた。こんなにかわいく、オシャレになっていたなんて。美久がすぐに気付けなくても仕方がないくらいに。
こんなことになるなんて。
今更ながら、遅れて嬉しさが湧いてくる。
当時仲の良かった友達が、同じクラスになんて。
偶然も過ぎる出来事だったけれど、美久の心はどんどん明るくなっていった。
美久はそれにおどおどとしてしまったのだけど、今は驚きと、視線の先の彼女のほうが重要だった。
「え、あ……っ、留依、ちゃん……?」
美久が戸惑いつつも、名前を呼んだことにほっとしたのだろう。もっと嬉しそうな顔をしてくれた。
「そう! そう! 一色(いっしき)小学校で二年生まで一緒だった留依だよ! えっ、知ってるひとどころじゃなかったよ! 偶然だね!」
留依は自分を指差して、満面の笑みになる。
どうやら知り合いに再会したようだ。
それはクラスにも了解されたようで、ざわめきは少し収まった。
「え、ぐ、ぐうぜん、だね……」
しかし美久はもっと口ごもってしまう。
留依に思わぬ再会をした戸惑いではない。
教室の前から思い切り自分に話しかけられて、そのためにクラスの視線が自分と留依のやりとりに向いていて。それに戸惑ってしまっていたのである。
それを途切れさせてくれたのは桜木先生だった。
「なんだ、友達がいたんだな。そりゃ良かった。じゃ、ちょうどいいから綾織にいろいろ教えてもらうといい」
「はい! そうします!」
それから留依は自己紹介に戻った。
テニスをやっているのだとか、勉強は数学が得意だとか、そういう、ごく普通の自己紹介。
聞きながら美久は、ぽうっとしていた。
クラスの視線を集めてしまって、まだちょっと心臓は高鳴っていたけれど。
こんなところで、こんな再会をするとは思わなかった。
だって、留依が言った通り、約十年ぶりなのだ。
留依が小学校二年生のときに、ご両親の都合で引っ越してしまってから。
最初こそ手紙なんかを書いたけれど、最近では年賀状くらいしかやりとりをしていなかった。
スマホを持つようになったのも中学生からだったから、連絡先も知らなかったし。
おまけに留依はずいぶん外見が変わっていた。こんなにかわいく、オシャレになっていたなんて。美久がすぐに気付けなくても仕方がないくらいに。
こんなことになるなんて。
今更ながら、遅れて嬉しさが湧いてくる。
当時仲の良かった友達が、同じクラスになんて。
偶然も過ぎる出来事だったけれど、美久の心はどんどん明るくなっていった。